お箏弾き方 → お箏はどのくらいの音の種類を出すことができる?
それは違います!
音域、音階とも、ピアノなどの鍵盤楽器と同じぐらいの音を出すことができるのです。
例えば、宮城道雄作曲の曲では、およそ下一点ラ(宮城道雄作曲『都踊』黄鐘、一の糸は五の乙)から三点ラ(宮城道雄作曲『さくら変奏曲』第7変奏トレモロの部分)つまり、4オクターブを使用しています。
しかし、(絃を手作業で締める職人さんにお願いすることによって)、糸の張力によってさらに高い音、低い音を出すことも可能ですし、さらに、高音についてはハーモニクス奏法(指で絃を軽く押さえ、わざと振動の節を作ることにより倍音を出す奏法)により調弦された音のさらに1オクターブ上を出すことも可能。
音域については、かなり自由度がある楽器なのです。
しかし、音域すべてで、美しい音色を奏でられる、とは限りません。
楽器として美しい音色が出る音域は、演奏者次第。指導者について、糸への爪の当て方、力の入れ具合、糸の弾き方、演奏姿勢などを正しく練習すればするほど、お箏は美しい音色を出してくれます。
それでは、音階はどうでしょうか?
音階は、絃を支える琴柱の位置によって作られます。琴柱を移動させながら演奏しますが、この行為を「調弦する。」と言います。
日本音楽の音階はペンタトニックスケール(五音音階)なので、たった13本の弦でも2オクターブ程度カバーできます。
種類は、平調子、雲井調子、中空調子、乃木調子、楽調子、岩戸調子、古今調子…など、奥ゆかしい名前がついています。
例えば一番代表的な平調子は、各絃を
D、G、A、A#、D、D#、G、A、A#、D、D#、G、A
という音を琴柱の位置によって作ります。「さくらさくら」もこの調弦で奏でます。
それでは、今では一般的な音階、西洋音階(七音)での曲はどう調弦すればよい?
お箏はドレミ音階でも、弾くことができます!
お箏の楽譜には、最初に、どの糸をどの音に調弦すればよいかの説明がついています。
例えば、大平光美先生の「花は咲く」の調弦は、
G、A、B♭、C、D、E、F、G、A、B♭、C、D、E
です。
各糸を、これらの音が出るように琴柱の位置にすることで、西洋音階で作曲された「花は咲く」も、お箏で演奏できるのです。
つまり、楽譜に書いてある調弦、音の指定によって、さまざまな音階を作り出すことができるわけです。
現代邦楽曲の藤井凡大先生の「二つの個性」では
というような調弦になっています。西洋音楽でも、一般的な日本古典音楽でもない音階です。
つまり、お箏は、お箏でしか表現できない音階での音楽を自由に作り出すことができるのです!
そして、弦を弾くと倍音が生じます。倍音は音の周波数により派生する音で、いわゆる〔音色〕に通ずる大切な響きですから倍音を活かした調弦かどうかは演奏者にとって見逃せないポイントなのです。
お箏の音は、奥が深い!
[KORORIN-SHANN & Tone]