お箏奏法ひとりごと ~ ゆりいろ、ミュート、押し放し、突き色

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左手がお箏ならではの音色を醸し出す奏法達です。

【ゆりいろ(揺り色)】











絃の余韻を揺らす、ビブラートをかけるために左手で柱の左側の絃を揺らす。
音を揺らすには絃を掴んだり、指先で押し手の要領でかすかに押したり。
本来、演奏というのは楽譜の表記に忠実であるべきですが、個人差が大きいのがこの技法!
楽譜に指示が無くてもあらゆる音にビブラートを効かせる傾向が強い演奏家もいます。
演奏を鑑賞する側は耳に、目にするユリ色は果たして作品上の指示なのか?

演奏会へお箏を聴きに行く醍醐味が、ここにも!
一番前の席に陣取って、じーっくり奏者の左手をガン見してください!

ゆりいろのおすすめの曲は、
宮城道雄作曲 小林愛雄作詞「秋の夜」
『落葉する 淋しき秋の夜更け
若き我が心 麗しき我を
いづれかえ 奪わんとひそみ寄る
物の怪に 心暗く震える』
この歌詞とともに奏でる音色は随所で「ゆりいろ」が用いられています。
宮城道雄自身の演奏音源ではよく聴かないととわからないのですが、
当時の録音技術では拾いきれない程に繊細な音色の変化だったのでしょう。

左手が絃を揺らす動作はきっと、この歌詞をさらに引き立てて、聴き手の心を揺さぶった事でしょう。

【ミュート】
ミュートというのはそもそも洋楽器(管弦打楽器)に装着する弱音器(消音器)のこと。
そこから派生した技法で箏柱の頭に左手指を置くことで音量が小さくなる。当然、音色は〈‘くぐもった〉感じになる。
音量を小さくするならp、mpなど強弱記号で良いのだから、ミュートはやはり音色の変化を目的としている技法なのでしょう。
この技法は現代作品以降に出現したものですが、お箏も西洋の楽器ともコラボして、新しい可能性がどんどん広がっています。
ミュートは、そんな背景もあっての、新しい技法ですね

【押し放し】











押し手、後押しからの二次的奏法。
絃を押した左手を放すと余韻の音程を下げる事が出来ます。
左手の動かし方次第で、1音、半音をコントロールしたり、ニュアンスも自由自在!弾き手も聴き手も楽しい、興味深い技法です。
ただ、忘れてはならないのは撥弦後の絃の余韻が残っている状態を前提とした技法なので、極めて繊細で小さな音です。録音ではマイクが拾ってくれますが、生演奏では響きのよい会場、静寂な聴衆が必須ですネ。

宮城道雄作曲「手鞠」は題名の通り、曲中で鞠をついている様子が「押しはなし」で描写されています。

バスケットボールやゴム鞠はドリブルしたことがあっても、実際に手鞠(糸巻き)をついたことのある人は令和の時代では希少ですよね。

この曲を演奏することで〈手鞠つき〉を疑似体験?!


【突き色】










左手の押し手+押し放しを素早く一体化した技法です。
近代箏曲のルーツ、八橋検校の『六段の調』でも使われているから古典的技法といえますね。
最近、ディズニーやポップスを箏アンサンブルに編曲された作品が多数ありますが、原曲にはもちろん突き色は無いのに旋律の中に散りばめられた突き色を耳にすることがあります。
せっかく箏アンサンブルに編曲したんだから、〈らしい音〉を盛り込みたい気持ち、凄くわかります^_^
そう、突き色は弦楽器である箏がアイデンティティを発揮する技法ですね。

例えば「アナと雪の女王」なら
レリゴv〜 レリゴv〜  (v・・・突き色のタイミングを表しました)
のように、さしずめ何を歌っても小節(コブシ)を入れてしまう日本風の歌唱法の如く
突き色を入れると見事にポップスが和風に!

[KORORIN-SHANN & Tone]


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